辨 |
ミクリ属 Sparganium(黑三稜 hēisānléng 屬)には、北半球の温帯・亜寒帯に約19種がある。
ホソバウキミクリ S. angustifolium(綫葉黑三稜)
S. confertum(穗狀黑三稜)
エゾミクリ S. emersum
ミクリ S. erectum(S.stoloniferum;黑三稜 hēisānléng)
『中国雑草原色図鑑』280・『中薬志Ⅰ』図10
オオミクリ var. macrocarpum
ヤマトミクリ S. fallax(曲軸黑三稜)
タマミクリ S. glomeratum(短序黑三稜)
ウキミクリ S. gramineum
チシマミクリ(タカネミクリ) S. hyperboreum(無柱黑三稜)
ナガエミクリ S. japonicum
S. limosum(沼生黑三稜)
S. minimum(矮黑三稜)
エゾミクリ S. simplex(小黑三稜) 『中国本草図録』Ⅳ/1907・『中薬志Ⅰ』図11
ヒメミクリ S. subglobosum(S. stenophyllum; 狹葉黑三稜)『中薬志Ⅰ』図12
S. yunnanense(雲南黑三稜)
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なお、漢名を荊三稜というものは、ウキヤガラ Scirpus yagara(S. fluviatilis)。 |
ガマ科 Typhaceae(香蒲 xiāngpú 科)については、ガマ科を見よ。 |
訓 |
和名は、果実の形が栗のいがに似ていることから。 |
『本草和名』及び『倭名類聚抄』三稜草に、「和名美久里」と。
『大和本草』三稜に、「河内ニテハ矢カラト云」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』10 荊三稜に、「ミクリ和名鈔 ミツカド藝州 ウキヤガラ伏見 ヤガラ河州 ロウトウ播州」と。 |
説 |
北海道・本州・四国・九州・朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・華北・陝甘・江蘇・江西・湖北・雲南から、ユーラシア・北アフリカの温帯に分布。 |
全国では準絶滅危惧(NT)、埼玉では絶滅危惧ⅠB類(EN)。 |
誌 |
中国では、塊茎を三稜(サンリョウ,sānléng)と呼んで薬用にするものに、荊三稜と 黑三稜とがある。
『中藥志 I』pp.23-31 によれば:
薬名を荊三稜というものは、次の植物の塊茎である。
ミクリ S. stoloniferum(黑三稜)
エゾミクリ S. simplex(小黑三稜)
ヒメミクリ S. stenophyllum(細葉黑三稜)
薬名を黑三稜というものは、次の植物の塊茎である。
ウキヤガラ Scirpus yagara(荊三稜)
このように、荊三稜と黑三稜とは、植物名と薬名が入替っている。
『全國中草藥匯編 上』pp.32-34 によれば:
三稜(黑三稜)はミクリ、荊三稜(泡三稜)はウキヤガラである。
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